腱鞘炎

 

原因について

腱鞘炎は、腱鞘と呼ばれる腱を包む組織が炎症を起こし、腱がスムーズに動かなくなる状態を指します。この炎症の原因はさまざまであります。その原因について詳しく見ていきましょう。

 

過度の使用

手や腕を頻繁に動かす動作を長時間繰り返し行うことが、腱や腱鞘に過剰な負担をかける主な原因です。例えば、タイピングやマウス操作、楽器の演奏、スポーツ（テニスやゴルフなど）での反復的な動作などが挙げられます。繰り返しの動作により腱が腱鞘を通過する際に摩擦が増加し、腱鞘内の組織に微小な損傷や炎症が生じます。これが進行すると、腱鞘が厚くなり、腱の動きが制限されるようになります。

 

不適切な姿勢や動作

作業時の姿勢や動作が不適切であると、腱に無理な負担がかかり、炎症を引き起こしやすくなります。特に手首や指を無理な角度で使用することが多い場合にリスクが高まります。

 

外傷

手や腕への打撲や切り傷など、直接的な外傷が腱鞘に損傷を与えることがあります。さらに関節の無理な動きや捻挫によって腱や腱鞘に負担がかかり、炎症を引き起こすことがあります。これらにより腱鞘の組織が損傷すると、体は修復反応として炎症を引き起こします。この炎症が慢性的になると腱鞘炎が発生します。

 

加齢

年齢が進むにつれて腱や腱鞘の柔軟性が低下し、炎症が起こりやすくなります。これは加齢による組織の劣化が影響しています。また女性は男性よりも腱鞘炎になりやすい傾向があります。これは女性が関与する活動や作業が影響していると考えられます。

 

慢性的なストレス

長期間にわたるストレスや緊張も腱鞘炎の一因となることがあります。精神的なストレスが筋肉や腱に影響を与え、炎症を引き起こすことがあります。

 

特定の健康状態

自己免疫疾患である関節リウマチは、全身の関節に炎症を引き起こし、腱鞘炎を併発することがあります。また痛風などにより、尿酸やカルシウムピロリン酸の結晶が関節に蓄積し、炎症を引き起こすことで腱鞘にも影響を与えることがあります。このような炎症性疾患により全身の炎症反応が高まり、腱鞘もその影響を受けて炎症を起こします。これにより腱鞘の柔軟性が低下し、痛みや腫れが生じます。

 

さらに糖尿病により高血糖状態が持続すると、組織の炎症反応が増加し、腱鞘炎のリスクが高まります。他にも肥満により手や腕にかかる負担が増加し、腱鞘にストレスがかかり、炎症を引き起こす要因となります。

 

ホルモンバランスの乱れ

女性ホルモンには腱や腱鞘を滑らかに動かす作用や炎症を抑制する作用があります。そのため、更年期や出産など女性ホルモンのバランスが崩れるときに腱鞘炎が起こりやすいです。
とくに産後は慣れない育児で手首に負担がかかりやすいため、腱鞘炎を発症する方が多くなります。

 

 

症状について

腱鞘炎の症状は、炎症が起きた腱や腱鞘の部位に依存します。その症状について詳しく見ていきましょう。

 

痛み

最も一般的な症状は、炎症が起きた部位の痛みです。鋭い痛みや鈍痛を感じます。さらに手や指を動かす、物を握る、押すなどの動作を行う際に痛みが増強します。安静時、夜間にも鈍い痛みを感じることがあります。また特定の場所を押すと痛みが強く感じられる場合があります。

 

腫れ

炎症が起きた部位周辺が腫れることがあります。特に活動後や長時間の使用後に顕著です。腫れは周囲の組織にも及び、見た目に膨らんでいることが確認できる場合もあります。また炎症に伴い、患部が熱く感じることがあります。

 

可動域の制限

炎症によって腱や腱鞘が硬くなり、関節の動きが制限され、完全に動かせなくなることがあります。特に朝起きたときや長時間同じ姿勢でいた後に、関節が硬く感じ動かしにくくなります。

さらに重度の腱鞘炎では、関節が変形することがあり、正常な動きができなくなることがあります。

 

クリック音や感覚

腱鞘炎の患部を動かすと、「クリック」音や「ゴリゴリ」した感覚を感じることがあります。これは腱が腱鞘内でスムーズに動かないために発生します。

 

関節の不安定感と疲労感

関節がしっかりと固定されていないような感覚を覚えます。重度の場合、関節が実際に外れることもあります。また痛みや不快感により、日常生活での動作が負担となり、全身的な疲労感を感じます。常に痛みや違和感を感じ、精神的なストレスも増加します。

 

筋力低下

手首や指の腱鞘炎では炎症が続くと、握る動作が困難になり、握力が低下します。これにより患部を使う力が弱くなり、日常の動作が困難になることがあります。